SIEMの機能調査と比較
2024/12/05
SIEMは、企業のセキュリティ情報とイベントを一元管理し、リアルタイムで脅威を検知・分析するシステムです。主な機能には、ログの収集・管理、イベントの相関分析、アラート通知、レポート作成などがあり、製品によって処理性能や高度な分析機能に違いがあります。
SIEM製品でできること - 機能
SIEM製品の主要機能には、ログ収集・管理、リアルタイム監視、イベント相関分析、アラート通知、レポート作成があります。
SIEM製品でできること:
複数のソースからのログデータを一元管理し、セキュリティ状況の包括的な可視性を得る
異常な活動や潜在的な脅威をリアルタイムで検出し、即座にアラートを生成する34
機械学習や行動分析を活用して、高度な脅威や内部脅威を特定する56
コンプライアンス要件に対応するための詳細なレポートを自動生成する78
検出された脅威に対して、自動化されたインシデント対応プロセスを開始する39
これらの機能により、組織はセキュリティ運用を効率化し、脅威への対応時間を短縮しながら、全体的なセキュリティ態勢を強化することができます。
SIEM製品のタイプ
SIEM製品は、その導入形態や機能に応じて大きく以下のタイプに分類されます:
オンプレミス型: 自社サーバーにSIEMシステムを構築するタイプで、高度なカスタマイズ性とデータ管理の完全なコントロールが可能です。ただし、初期コストや運用負担が大きく、専用のITリソースが必要です12。
クラウド型: ベンダーが提供するオンラインサービスを利用するタイプで、迅速な導入とスケーラビリティが特徴です。インフラ管理が不要なため、運用負担を軽減できますが、データの外部管理に対する懸念がある場合もあります12。
ハイブリッド型: オンプレミスとクラウドの利点を組み合わせたタイプで、柔軟性とコスト効率を両立します。例えば、機密性の高いデータはオンプレミスで管理し、他のデータはクラウドで処理する、といった運用が可能です。
これらのタイプは、組織の規模やセキュリティ要件、ITリソースに応じて選択されます。それぞれの特性を理解し、自社に最適な形態を選ぶことが重要です。
オンプレミス型SIEM
オンプレミス型SIEMは、組織内部にシステムを構築・運用する形態です。
メリット:
高度なカスタマイズ性:組織固有のニーズに合わせて詳細な設定が可能
データの完全管理:機密性の高い情報を自社内で保持できる
セキュリティレベルの自由な設定:独自の厳格なセキュリティポリシーを適用可能
情報漏洩リスクの低減:外部サービスに依存しないため、データ流出の懸念が少ない
デメリット:
高い初期コスト:ハードウェア、ソフトウェア、導入作業に多額の投資が必要
運用負担の増大:システムの保守管理や更新を自社で行う必要がある
スケーラビリティの制限:急激なデータ量の増加に対応するには追加投資が必要
専門知識の要求:SIEMの効果的な運用には高度なスキルを持つ人材が必要
オンプレミス型SIEMは、データ管理の完全性と高度なカスタマイズ性を重視する組織に適していますが、コストと運用負担の観点から慎重な検討が必要です。
クラウド型SIEM
クラウド型SIEMは、迅速な導入とスケーラビリティの高さが特徴です。
メリット:
迅速な導入: オンプレミス型と比較して、クラウド型は導入プロセスが簡素化されており、短期間で運用を開始できます。
運用負担の軽減: ベンダーがアップグレードやバグ修正を管理するため、ITチームの負担が大幅に軽減されます。
コスト効率: 初期投資が少なく、低メンテナンスで運用コストを削減できます。
高度な分析機能: AIや機械学習を活用した高度な分析機能を備え、潜在的な脅威を検出する能力が向上しています。
デメリット:
データ管理の懸念: データが外部環境に保存されるため、特に規制の厳しい業界では懸念が生じる場合があります。
カスタマイズ性の制限: オンプレミス型に比べるとカスタマイズ性が低く、特定のニーズに対応しにくい場合があります。
依存性: ベンダーに依存するため、サービス停止や価格変更がリスクとなる可能性があります。
クラウド型SIEMは、その柔軟性と効率性から多くの企業に適していますが、データ管理や依存性に関する課題を慎重に評価することが重要です。
ハイブリッド型SIEM
ハイブリッド型SIEMは、オンプレミスとクラウドの利点を組み合わせたタイプです。
メリット:
データの柔軟な管理: 機密性の高いデータをオンプレミスで保持しつつ、他のデータをクラウドで処理できる
コスト効率: 初期投資を抑えながら、必要に応じてスケールアップが可能
運用負荷の軽減: クラウド部分の管理をベンダーに委託し、IT部門の負担を軽減
高度な分析: クラウドのAI/ML機能を活用しつつ、オンプレミスデータの詳細分析も可能
デメリット:
複雑な構成: オンプレミスとクラウドの統合管理が必要
コスト管理: 両環境の最適なバランスを取るための継続的な調整が必要
セキュリティ設定: 異なる環境間でのセキュリティポリシーの一貫性確保が課題
ハイブリッド型SIEMは、組織の規模やセキュリティ要件に応じて柔軟に構成できる利点がありますが、適切な設計と管理が求められます。
SIEM製品の比較のポイント
SIEM製品を比較する際の主要なポイントは以下の通りです:
受信性能:製品の最大処理速度(EPS)を確認し、組織のニーズに合致しているか評価する
検知機能:SOARやUEBAなどの高度な分析機能の有無を比較する1
システム構成:オンプレミス、クラウド、ハイブリッドなど、組織の環境に適した構成を提供しているか確認する12
ライセンスモデル:データ量ベースかユーザーベースかなど、コスト効率の良いモデルを選択する
統合性:既存のセキュリティツールやクラウドプラットフォームとの連携の容易さを評価する
使いやすさ:直感的なユーザーインターフェースと効率的なワークフローを提供しているか確認する
製品選定の際は、これらのポイントを組織の具体的なニーズや目標と照らし合わせて評価することが重要です。また、無料トライアルやデモを活用して、実際の使用感を確認してから製品を導入するのも良いでしょう。
SIEM製品比較
QRadar(IBM)
IBMのQRadarは、膨大なログデータやネットワークフローを収集・分析する能力を備えています。主な特徴は、450以上の統合機能やAPIを活用し、既存のセキュリティツールとの連携が簡単である点です。また、モジュール式アーキテクチャにより、リアルタイムでITインフラ全体を可視化し、脅威の迅速な検知と対応を可能にします。
メリット:
高度な分析能力: 機械学習やAIを活用した相関分析により、高精度の脅威検出が可能
カスタマイズ性: オンプレミス環境での詳細な設定が可能で、特にデータ管理において完全なコントロールを提供
統合性: 多様なセキュリティツールやクラウドプラットフォームとの連携が可能
継続的な更新: 新しい検知ルールや脅威インテリジェンスが自動的に更新されるため、進化する脅威に対応
デメリット:
高コスト: 初期費用や運用コストが高く、価格モデルが複雑
UEBA機能の弱さ: 次世代SIEMとして期待されるユーザーとエンティティ行動分析(UEBA)機能が限定的
運用負担: 専門知識を持つ人材が必要であり、導入後の管理負担が大きい
分散環境でのサポート制限: 特に複雑なネットワーク環境ではサポートが不足する場合がある
QRadarは、大規模組織やオンプレミス環境を重視する企業に適しています。一方で、高コストや運用負担の観点から、中小規模の企業には慎重な検討が求められます。
Sentinel(Microsoft)
Microsoft Sentinelは、クラウドネイティブのSIEMおよびSOARソリューションとして設計されており、スケーラビリティと自動化機能を兼ね備えています。
主な特徴は、Azureプラットフォームとのシームレスな統合、多数のデータコネクタを活用した幅広いデータ収集、AIによる高度な脅威分析とアラート削減があります。
メリット:
迅速な導入とスケーラビリティ: クラウド型のため、初期設定が簡単で、必要に応じて拡張可能
自動化と効率化: SOAR機能により、インシデント対応のプロセスを自動化し、人的ミスを削減
多様な統合性: Microsoft製品だけでなく、サードパーティ製品とも連携可能で、一元的なセキュリティ管理を実現
高度な分析能力: AIと機械学習を活用し、潜在的な脅威をリアルタイムで検出
デメリット:
学習曲線の急峻さ: KQL(Kusto Query Language)の習得が必要であり、新規ユーザーには操作が難しい場合がある
カスタマイズ性の制限: 特定の要件への適応には時間と技術的知識が必要
予測困難なコスト構造: データ量に基づく課金モデルが予算編成を複雑にする場合がある
UIの複雑さ: 初心者には直感的ではないインターフェースが課題となることも
Sentinelは、多様なセキュリティニーズに対応できる一方で、技術的なハードルやコスト管理の課題もあります。これらを考慮しつつ導入することが重要です。
比較まとめ
まとめ
SIEMは組織のセキュリティ態勢を強化する重要なツールで、オンプレミス型、クラウド型、ハイブリッド型の3つの導入形態があります。それぞれ特徴が異なるので、組織のニーズに合わせて選択をすることが大切となります。
製品選定の際は、受信性能、検知機能、システム構成、ライセンスモデル、統合性、使いやすさなどを考慮し、組織の具体的な要件と照らし合わせて評価する必要があります。
業界をリードする数あるSIEM製品の中に、IBM社のQRadarとMicrosoft社のSentinelがあり、それぞれ異なる特徴やメリット・デメリットがあります。
SIEMの導入は組織のITインフラ構成、セキュリティ要件、運用リソース、予算などを考慮して決定する必要があります。適切なSIEM製品の選択と効果的な運用により、組織は脅威検出能力を向上させ、セキュリティインシデントへの対応を効率化することができます。
代表取締役
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岩城拓海
インターン
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関谷尚子
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